Jリーグ ファイヤーフォーメーション傑作選

 

寒いのでファイヤーフォーメーションで暖を取ります。


2015 清水エスパルス

火元:地元産えのき

前年60失点と破綻した守備を立て直すべく、2015年の清水は最終ラインに三浦・ヤコヴィッチ・平岡・犬飼の4CBを並べ、中盤にもボランチを3枚置く鉄壁の布陣で開幕を迎えました。

開幕2戦を1勝1分、1失点と上々のスタートを切ったものの、3節のホーム松本戦で完封負けを喫したことで早々に4CBは頓挫。しかしそこから連敗が始まり、テコ入れで3バックに変更するも好転しないままCBの数が減っていき、迷走の末に辿り着いたのがファイヤーフォーメーションです。最も燃えていたのが1stステージ16節の甲府戦(0-2敗戦)。

見た目のパワーもさることながら、手薄な左SBを埋めるために途中加入したはずの福村が3バック中央を任されていたり、高卒ルーキーが二人出ていたりとツッコミどころが多いです。

当然これで守ることはできず、このファイヤーフォーメーションは大榎監督がfire(解任)されることで終焉を迎えました。後を託された田坂監督の下で普通の4バックに回帰しましたが、最後までチーム状態が上向かないまま、クラブ史上初のJ2降格となりました。

その後ウタカはJ1で得点王となり、デュークはW杯でFWとしてゴールを奪い、犬飼と三浦は国内有数のセンターバックへと成長。2015の炎上を糧に進化した選手たちの活躍が、このファイヤーフォーメーションの美しさを一層引き立てているように思います。

↓4節のスタメン落ち翌週にGKをやらされる三浦

 

2017 名古屋グランパス

出火原因:風

クラブ史上初めてJ2を戦うことになった2017シーズン、名古屋は風間八宏氏を監督に迎えました。極端なボール保持志向のもと「止める・蹴る・外す」などの能力で基準に達しない守備者たちは淘汰されていき、ファイヤーフォーメーションの日常を過ごすことになります。中でも火を噴いたのが5節の松本戦(2-1勝利)。

スタメン11人のうちストライカーが5人で、CBもボランチも本職が一人しかいません。和泉司のボランチ、永井と杉本士のWBはドラゴンのように火を噴いています。大卒2年目だった和泉は、この年にGK以外の全ポジションを経験することでユーティリティプレーヤーとして名を馳せるようになりました。

風間サッカーではゴールを守ることよりも攻撃で目を合わせることが優先されるため、コンバートによるCB起用(小林裕紀、磯村、和泉など)が頻発します。この年は4点取って4点取られて3点取るサッカーで辛うじて昇格を果たしたものの、高校生の菅原由勢をCBに起用した昇格1年目は最下位を疾走。「センターバックには守備力が必要」という真理に風間監督がついに気づき、夏に中谷と丸山を補強することでセンターバック問題がようやく解決。逆転での残留を果たしました。

 

2022 サガン鳥栖

出火原因:玉突き事故

従来からの経営難に追い討ちをかけるように、パワハラ問題により金明輝監督が退任。中心選手の退団も相次ぐ中で、移籍確実と思われていた主将のエドゥアルドは男気残留。しかし開幕を控えた2月、チアゴ・マルチンスのMLS移籍に巻き込まれる形でエドゥアルドが急遽マリノスに移籍することになります。

実績あるCBがファン・ソッコ1人となった緊急事態において、川井監督はサイドバックボランチの選手をCBにコンバートすることで危機を乗り切りました。サッカーの質が高く結果も伴っていたためあまり目立ちませんでしたが、4バックからCBを1人抜いてそのまま3バックを形成するというのは結構なファイヤーです。ファン・ソッコが出場停止となった31節の京都戦(0-1敗戦)ではスタメンにセンターバックが0人となりました。

攻撃的GKパク・イルギュが最後尾に位置し、2CBにはコンバート組の原田と島川。途中加入のサイドアタッカー長沼をSBに置き、同じく途中加入の攻撃的ボランチ手塚が初先発。さすがに急造すぎたのかこの布陣は噛み合わず、残留を目指す京都に勝ち星を献上しました。

鳥栖はこの試合を含め6戦11失点かつ未勝利でシーズンを終えましたが、前半戦の貯金が生きて余裕の残留を果たしました。迎える2023シーズン、CB陣はコンバート組のジエゴが柏に引き抜かれたものの、アンソニー・アクム、山崎浩介、平瀬大らが加わりまずまずの陣容。さすがにファイヤーフォーメーションは2022で見納めになりそうです。